Jaki Byard / Freedom Together! (Transatlantic) '68


Jaki Byard(p,ts,ep,celeste,vi,dr) Richard Davis(b,cello) Alan Dawson(dr,vi,tympani) Jr.Parker(vo)
ミンガス・グループといえばEric DolphyRoland Kirkなど、所謂「奇才」と称されるプレイヤーが在籍していたことで有名です。そしてこのJaki Byardも同様に、長くミンガスのバックに付いていたプレイヤーであり、ミンガスの広い音楽性を彩っていた「奇才」でした。その彼の実験性が色濃く出たのがPrestigeからの5作目となるこのアルバム(僕が持っているのはTransatlanticからのUK盤なのです)。パーソネル表記からして既に異様ではありますが、簡単に纏めてしまうと、当時全盛のフリー・ジャズの煽りを受け、各人が様々な楽器を操りつつ、トリオ編成におけるアンサンブルの多様性を試したかのような作品(Jr.Parkerがヴォーカルをとるのは2曲のみ)。というわけで、彼が様々な楽器にチャレンジしているということ自体はあまり重要ではありません。この作品はJaki Byardの作品としてではなく、アヴァンギャルドなトリオ作品として聞いてこそ美しいのです。その点において、Richard Davis、Alan Dawsonの両名がこの作品に寄与したものがあまりにも大きい。Jaki Byardのペンによる「Nocturne For Contrabass」はその極致。"ピアノ、チェロ(アルコ)、ティンパニー"で始まる荘厳なイントロから、"ピアノ、ベース(ピチカート)"のワルツ、"ピアノ、ベース、ヴァイブス"のフリー・インプロへと移り変わる様は圧巻の一言。覚醒的なティンパニーに添えられる虚ろな弓の唸り、跳ね回るピアノを正確に彼岸へと誘う指捌き、終始Richard Davisに心を奪われます。「Just You, Just Me」のようなハード・バップ・ナンバーでの、サイド・マン両名のソロもまた見事で、懐の深さが伺えます。ラストを飾るピアノ・ソロではガーランドばりのブロック・コードも披露され、ピアノ・トリオとしての面目を保ってはいますが、ピアニストのリーダー作として聞くにはやはり、物足りなさは否めません。それでもこのレコードこそ、僕のピアノ・トリオ観を分かりやすく映してくれているような気もするのです。