Michael Garrick Trio / Moonscape (Trunk) '07


Michael Garrick(p) Dave Green(b) Colin Barnes(dr)
英国のピアニストMichael Garrickによる64年作。オリジナル10インチのプレスは99枚、しかも昨年のこの再発も500枚のみと、気が遠くなるほどレアな作品。店頭から消えるのも本当に字の如くあっという間で、そんな作品をなぜ僕が買っていたかというと、先述の『The Tomorrow People』などアヴァンギャルドばかりをリリースしてきたTrunkが、しかも僕の大好きなトリオものを出したから、という一点に尽きます(Jazzman Geraldあたりも絡んでるみたい)。そのレアリティのみが注視されている感もありますが、もちろん内容も一級品。この後年にジャズ・ロックやビッグ・バンドもの、さらにはポエトリー・リーディングを取り入れるなど意欲的な吹き込みを行っている彼の作品の中では(Ian CarrやDon Rendellなどとも共演しています)、本作は非常にシンプルと言えるかもしれません。確かにプレイ・スタイルは欧州産モーダルと言い切ってしまえばそれまでなのですが、それを乗り越えていくのが不穏なテーマと、浮いては消える幻想的なフレーズです。特にタイトル曲「Moonscape」、そしてラストの「Take-Off」における右手の細やかなフレーズは、リラックスなどとは程遠いある種の危機感を聞き手にもたらします。スライドからの転調、不意としか思えない高音の不協和音とベース(低音のくぐもったような録音も、アルコを引き立たせる!)の鬩ぎ合い、全てが霧の中の出来事のように一瞬で、不鮮明で、夢現を錯覚させるのです。